人体への影響
人が放射線を受けたときの影響は、「確定的影響」と「確率的影響」とに分かれます。
人が放射線を受けると、放射線の電離作用により、細胞のDNAが傷つきます。受けた放射線が少量の場合、人体には細胞が再生産される際にDNAを修復する力があるため、受けた放射線がごく少量であればほとんどが問題なく修復されます。しかし、一度に大量の放射線を受けてしまうと、DNAが損傷して再生産が不可能になった細胞の数が再生産可能な細胞の数を上回り、細胞の修復が追い付かなくなります。
「確定的影響」
被曝の結果、たくさんの細胞が死ぬなどし、臓器や組織の働きが悪くなったり形に異常が生じたりすることで、吐き気、嘔吐、脱毛、不妊、白内障、白血球や血小板の減少等の症状が現れること。
大量の放射線を短時間のうちに受けた場合、被ばく直後から数週間のうちに現れるようになります。そして、受けた放射線量が多いほど早く症状が現れます。確定的影響には「これ以上の被ばくをすると症状が現れる」という境界が存在します。なお、100ミリグレイ以下の被ばくではいずれの症状も確認されていません。
「確率的影響」
細胞修復の際にDNAが不完全に修復され、細胞が突然変異を起こすことで、がん細胞に変化したり、遺伝的な影響が発生したりすること。細胞そのものがダメージを受けるのではなく細胞の再生産に影響が出るため、被ばく直後は目に見えた症状はあまり出ません。
DNAの損傷は放射線だけでなく喫煙や飲酒、食事や化学物質によっても発生し、個別のケースにおいてがんの原因を放射線の影響であると言い切るのは困難なため、「これ以上の被ばくをすると症状が現れる」という境界が存在しません。ただし、被ばくしている人のグループとしていない人のグループの発がん率を比較すると、被ばくによる発がんのリスクを証明できます。100~200mSvの放射線を受けた場合の発がんリスクは野菜不足と同程度、200~500mSvの放射線を受けた場合の発がんリスクは運動不足と同程度といわれています。受ける放射線の量が多くなればなるほどリスクは上昇しますが、症状は重くなりません。